暴力や脅迫などで身の危険がある場合は、準備をそろえることよりも安全の確保を優先してください。緊急時は110番、相談先がわからない場合はDV相談ナビ「#8008」から相談できます。


1.別居したい理由と希望を整理する


まず、「なぜ別居したいのか」「別居してどうしたいのか」をメモにしてみましょう。

夫の暴言、生活費を渡してもらえないこと、家事・育児の負担、夫婦の会話が成立しないことなど、いつ、何があったのかを具体的に書きます。離婚を望むのか、いったん距離を置いて考えたいのか、まだ迷っているのかも、そのまま整理して構いません。

別居する時点で、離婚の結論まで出しておく必要はありません。相談の際に経緯と希望を説明できるようにしておくと、必要な準備が見えやすくなります。

2.安全に暮らせる住まいを確保する


実家、賃貸住宅、一時的な滞在先など、別居後に住める場所を検討します。家賃だけでなく、敷金・礼金、引っ越し代、家具・家電の費用まで確認しましょう。

子どもがいる場合は、通園・通学、送り迎え、勤務先までの距離も大切です。実家に頼る場合も、住める期間や生活費の負担について事前に相談しておくと安心です。

DVやストーカー行為が心配なときは、夫に避難先を知らせる前に、配偶者暴力相談支援センターなどへ相談してください。住所情報の保護についても、自治体の窓口で確認できます。

3.別居後の生活費を見積もる


家賃、食費、光熱費、通信費、交通費、医療費、子どもの教育費などを書き出し、毎月必要な金額を確認します。引っ越し直後にかかる費用と、毎月の費用は分けて考えましょう。

自分の収入や預貯金でどこまで支払えるか、家族の援助が可能かも整理します。夫からの生活費の支払いがすぐに始まるとは限らないため、当面の資金の見通しも必要です。

自分名義の口座や利用できる支払方法を確認しておく一方、夫婦の預金を一方的に全額引き出すなどの行動は、後の争いにつながる可能性があります。資金の扱いに迷う場合は、先に弁護士へ相談しましょう。

4.婚姻費用を確認し、請求の準備をする


離婚が成立するまでの夫婦の生活費は「婚姻費用」の問題になります。別居しただけで、夫婦の生活費を分担する義務が当然になくなるわけではありません。

婚姻費用の金額は、夫婦双方の収入、子どもの人数・年齢などによって異なります。源泉徴収票、給与明細、確定申告書など、適法に確認できる収入資料を整理しておきましょう。

話し合いがまとまらない場合や、直接話し合うことが難しい場合は、家庭裁判所の婚姻費用分担請求調停などを利用できます。過去にさかのぼって別居開始時から必ず受け取れるとは限りません。請求した時期が問題になることがあるため、生活費が不足する場合は早めに相談してください。

5.子どもの暮らしと転居について相談する


子どもと別居先へ移ることを考えている場合は、住まいだけでなく、学校・保育園、通院、生活リズム、日々の養育を誰が担うかを整理します。これまでの送迎、食事、通院などの養育状況も記録しておきましょう。

2026年4月施行の改正民法では、父母双方が親権者である場合の親権の行使についてルールが整備されています。子どもの転居は、同じ学区内でも、基本的には「日常の行為」には当たらないとされています。

DVや虐待からの避難など、子どもの利益のために急迫の事情がある場合には、一方で判断できる場合があります。子どもを連れて別居してよいかは、事情によって判断が異なります。危険があるときは安全を優先し、それ以外の場合も、転居前に弁護士へ相談して進め方を確認しましょう。

6.身分証や生活に必要な書類をそろえる


本人確認書類、健康保険の資格を確認できるもの、マイナンバーカード、通帳、自分の印鑑、母子健康手帳、お薬手帳など、生活に必要なものを確認します。

子どもの学校・保育園の連絡先、診察券、処方薬、必要な衣類や学用品も整理しておきましょう。原本を持ち出す必要がない資料は、適法に取得できる範囲でコピーを保存する方法もあります。

別居後に取りに戻ることが難しくなる可能性があります。夫名義の書類や所有物を無断で持ち出すことは避け、必要な資料の確保方法は相談してください。

7.夫婦の財産と借金の状況を記録する


預貯金、不動産、住宅ローン、保険、証券口座、自動車など、わかる範囲で一覧にします。名義、金融機関、残高、取得した時期、借入先などを記録しておくと、後の財産分与を検討する際に役立ちます。

夫名義の財産でも、婚姻中に夫婦の協力で形成した財産は、財産分与の対象となり得ます。一方、婚姻前からの財産や相続・贈与で得た財産などは、扱いが異なります。

ペアローンや連帯保証がある場合、別居しただけで金融機関に対する返済義務や保証責任がなくなるわけではありません。夫の端末や口座へ無断でログインすることは避け、適法に確認できる資料を保存しましょう。

8.夫婦関係の経緯や証拠を保存する


暴言、暴力、生活費の不払い、不貞などが問題になっている場合は、関係するメッセージ、写真、診断書、家計の記録などを保存します。

日記やメモは、日付、場所、具体的な言葉や行動、その場にいた人をできるだけ正確に書きましょう。子どもの前での言動や、自分・子どもへの影響も記録しておくと相談時に役立ちます。

証拠を集めるために危険な状況へ戻ったり、相手を挑発したりする必要はありません。記録は加工せず、原本や元データを残し、相手に見られにくい安全な場所で保管してください。

9.連絡方法と別居時の伝え方を決める


安全に話し合える場合は、別居の理由、生活費、子どものこと、今後の連絡方法などを整理して伝えることを検討します。合意できた内容は、後から確認できる形に残しておきましょう。

直接話すと威圧される、怒鳴られるといった場合は、弁護士を窓口にする方法もあります。暴力や脅迫のおそれがあるときは、事前に別居を告げることにこだわらず、避難と相談を優先してください。

自分のメールや各種アカウントのパスワード、端末の位置情報共有、通知の表示も確認します。共有の端末やメールから相談すると内容を見られる可能性があるため、安全に使える連絡手段を確保しましょう。

10.行政手続と相談先を確認する


住民票、健康保険、年金、児童手当、学校・保育園、郵便物などについて、別居後にどのような手続が必要か自治体や関係機関へ確認します。

別居しただけで、離婚後と同じ支援をすべて利用できるとは限りません。児童手当の受給者変更や各種支援は、離婚協議中であることを示す資料などが必要になる場合があります。自分の状況に合う制度と必要書類を窓口で確認しましょう。

離婚を決めていなくても、弁護士への相談は可能です。別居の理由、収入、財産、子どもの状況、希望する暮らしを整理して持参すると、生活費の請求や別居の進め方を具体的に検討できます。

別居の準備は、自分と子どもの生活を守るために


夫と別居したいと思ったとき、すべてを一人で決める必要はありません。安全、住まい、生活費、子どものことから優先順位をつけ、できるところから準備を進めましょう。

別居することと、離婚を決めることは同じではありません。これからどう暮らしたいかを考える時間を持つためにも、早い段階で相談し、自分に合った進め方を確認することが大切です。

※本コラムは2026年10月時点の一般的な情報です。具体的な判断は、個別の事情によって異なります。

参考資料:
- 裁判所「婚姻費用の分担請求調停」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_03/index.html
- 法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00377.html
- 内閣府「配偶者等からの暴力の被害者への支援」
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/ouen/safe/dv/

監修 弁護士 川原俊之(大阪弁護士会)

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